森医院,一宮市,起,尾西,内科, 循環器科,小児科

診療トピックス

コーヒーは健康にいい?!

つい最近までは、「コーヒーは刺激性があり胃腸に負担をかけるので飲み過ぎ無いようにしましょう」と言われ、嗜好品としてタバコと同じように考えられていました。しかし1970年代ごろより、コーヒーに肝臓ガンの予防効果があるらしいとの研究報告がされてきました。以後、いろいろな病態に有益であるとの報告が、実験研究や疫学研究を通して発表されるようになりました。現在までにわかっている、コーヒーがどのように身体にいいかについて簡単に述べてみたいと思います。

1.老化を抑える
細胞の酸化の原因となっている活性酸素は、いろいろな部位で体を攻撃しこれが老化の原因となっているといわれています。コーヒーは活性酸素を消去する働きがあり、コーヒーを飲むことで活性酸素の量を調整できれば、老化を予防できることになります。
2.糖尿病の予防効果がある
コーヒーを多く飲めば飲むほど、糖尿病にかかる危険率が減少するといわれています。コーヒーに含まれているクロロゲン酸が血糖値の調整に働くほか、カフェインが膵臓からのインシュリン分泌を促進させるといわれています。
3.認知症の予防効果がある
コーヒーに含まれているカフェインにアルツハイマー病の予防効果があるといわれています。カフェインを与えると脳でのアミロイドというタンパク質の蓄積を抑え、認知症の原因とされる老人斑の形成を4~5割減少させました。
4.肝臓癌の発生を抑制する
コーヒーを一日一杯以上飲む人は、全く飲まない人に比べ、肝臓癌になる危険性は六割程度といわれています。コーヒーを飲むことによる肝臓癌の発生抑制は、ほぼ確実といわれています。
5.大腸癌の発生を抑制する
コーヒーを一日一杯以上飲む女性は、全く飲まない人に比べ、大腸癌になる危険率は半分以下であります。動物実験でも、コーヒーに含まれているクロロゲン酸を与えると大腸癌の発生がほとんどなかったとする報告があります。
6.子宮体癌の発生を抑制する
コーヒーを一日三杯以上飲む女性は、ほとんど飲まない女性に比べ、子宮体癌にかかる危険率が約6割低いとする報告があります。コーヒーを飲むと女性ホルモンの濃度が下がり、子宮体癌を予防する可能性があるといわれています。

コーヒーを飲みすぎると、膀胱癌の発生が増加するとの報告がありましたが、そうでないとする逆の報告もあり、これに関しては現在はっきりしていません。

仕事で疲れたとき、食事の後、読書しながらのコーヒーは格別です。日々の大きな楽しみの一つです。さらにそれが健康にもよいということがわかってきた今、私達はコーヒーライフをおおいにエンジョイしたいと思います。

23年9月

夏まけ、熱中症に効く漢方薬は?

今年の夏は異常に暑くて、私が住んでいる一宮市は8月になって最高気温が35℃を越える猛暑日が続いています。それに伴い、熱中症で倒れ病院に運ばれる人があとを断ちません。もともと体力のない子供さんやお年寄りの人が熱中症になりやすいのですが、体力のある人でも、長時間炎天下にいた場合や、寝不足で疲れているときには、熱中症にかかってしまいます。

夏まけ、熱中症になると、身体がだるい、食欲がない、口が渇く、脂汗が出るなどの症状を初期にきたしますが、さらに症状が進むと頭痛、けいれんをきたし、ひどいと生命の危険をきたします。

今年は、胃腸かぜが流行し、それによる嘔気、嘔吐、下痢をきたし、その結果身体から水分が抜けてしまい脱水となり、点滴で水分を補うことが必要になってきます。西洋医学では点滴治療がメインになりますが、漢方医学では「清暑益気湯」という漢方薬でさらに強力な援護が可能となります。

「清暑益気湯」はその名の通り、暑さを清し気を増すという薬です。「清暑益気湯」の中には代表的な製剤では、9種類の生薬が入っています。黄耆と人参は元気を補いますし、麦門冬というユリ科の根は口の乾きをとります。「清暑益気湯」は五味子という果実のせいで少し酸っぱい味がするのですが、五味子は脱水にならないよう水分を増やします。さらに身体にこもった熱を黄柏というミカン科の木肌でさまします。

 

疲れたときに元気をだす漢方薬に有名な「補中益気湯」がありますが、この「清暑益気湯」は真夏の炎天下で汗を大量にかいたときに、身体に水分を補う作用が強力です。これは「補中益気湯」にはない作用で、その意味で西洋医学の点滴に匹敵します。

夏まけ、熱中症なってからこの「清暑益気湯」を服用してもよいのですが、炎天下での仕事や学校でのクラブ活動で熱中症になる危険が予想されるときに、前もって服用しておくと身体に熱がこもらなくて熱中症の予防効果があります。

23年8月

頸動脈超音波によって動脈硬化がわかる!?

頸動脈は心臓から頸部(首)に向かって出ている動脈のことで総頚動脈と言います。これが内側と外側に分かれてそれぞれ内頚動脈と外頚動脈になり、頸部から頭部に走行しています。頸動脈超音波は、頸部の表面に超音波(エコー)の探触子をあてて、主に内頸動脈の動脈硬化の有無や程度を調べます。

頸動脈超音波検査には検査の痛みはありませんし、検査時間も15分ぐらいで簡便にできますので最近になって普及してきています。頸動脈の狭窄、閉塞や脳塞栓の塞栓源となりうる動脈硬化性血管病変の発見につながったり、生活習慣病に対して積極的に取り組むための動機付けになります。

実際の検査では、動脈硬化の指標として内膜中膜複合体厚(intima-media thickness:IMT)を用います。動脈の血管の壁は三層構造になっており、血管の内側より内膜、中膜、外膜になっています。動脈硬化が進んできた場合は、内膜から中膜にかけて肥厚します。

内膜中膜複合体厚は、正常値が1.1mm以内であり、1.1mmを超えると異常といわれてます。特に1.5mm以上の場合や柔らかい感じのエコーの血栓(プラーク)が認められる例では、将来に脳卒中や虚血性心疾患を起こしやすいと言われています。

高血圧、糖尿病、高コレステロール血症や喫煙などの危険因子が多い場合には、内膜中膜複合体厚の厚みが増し、動脈硬化が進んでいるとみなされます。動脈硬化が進展している場合には心筋梗塞や脳血管障害などの生命をおびやかす病気をおこす危険が多くなります。

しかし、治療や生活習慣の是正によって糖尿病、高血圧や高コレステロール血症が改善されると内膜中膜複合体厚の厚みは減少し、その結果動脈硬化の悪化を阻止できます。

高血圧、糖尿病、高コレステロール血症や喫煙などの危険因子が多い人は、定期的に頸動脈の内膜中膜複合体厚を測定し、自覚症状としては表れない動脈硬化のチェックをして脳卒中や心筋梗塞の危険から身を守るよう気をつけましょう。

当院では頸動脈超音波検査をおこなっています。スタッフまでお申しつけ下さい。

23年7月

頭痛に漢方薬?!

日常生活上、頭痛はよく経験します。ほとんどの頭痛は一時的でありますが、なかには生命の危険にさらされる場合もあります。急性期ではくも膜下出血や外傷後の頭蓋内血腫などによる頭痛、慢性期では脳腫瘍による頭痛などいずれも恐い病気であります。

一方、生命の危険はないが、なんらかの身体の異常がある時に日常慢性的に経験する頭痛はいろいろあります。例えば、疲れた時に悪化する頭痛、冷えや寒さを感じた時に出現する頭痛や一番ポプュラーな風邪の時の頭痛などであります。

今回、お話ししたい頭痛は、意外に本人でも気がついていない「雨の前日」におこる頭痛であります。この頭痛は「雨」という天気が関係するもので、東海地方に住んでいる人なら、雨は西の九州方面から進んで来るので、九州が雨になりかける頃に頭痛が起こることになります。

頭痛が雨に関係しているかどうかを確かめるためには、一ヶ月間ほど天気をつけて頭痛がどの天気の時におこっているかを調べると一目瞭然であります。この天気カレンダーをつけてみると、頭痛は「晴れ」の時には起こらなくて、「雨が降る前日で気圧が下がっている」時に起こることがわかります。

この天気と頭痛との関係があるとはっきりわかった場合、五苓散という漢方薬は非常に良く効きます。この五苓散は茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、白朮(びゃくじゅつ)、沢潟(たくしゃ)桂枝(けいし)のわずか五つの生薬から成り立っていますが、最近の発表ではいろいろな分野の病気に多大の効果があるといわれています。

例えば、漢方とは全く対極と思われる脳外科領域での慢性硬膜下血腫、脳梗塞急性期の脳浮腫や小児科での嘔吐下痢症、皮膚科領域では帯状疱疹の水疱や日頃われわれがアルコールを飲んだときの二日酔いなどに効果があります。水分が余分にあれば尿として身体の外に出し、水分が不足していれば保持するように働く、いわゆる身体の水分を調整して浮腫などをきたさないようにする作用があります。

漢方には「雨の前日の頭痛」以外にも、いらいらやほてりを伴うこめかみの頭痛、気分が沈みがちな時の頭痛、生理前の頭痛、外傷後の頭痛、食事直後の頭痛、めまいや不眠時の頭痛などいろいろな状態に対処できる方剤があり、西洋薬とはちがってきめ細かなその人の体質にあったオーダーメイド治療が可能であります。

23年6月

早朝高血圧ってなに?

私が医者になった頃、30数年前になりますが、救急病院の当直に行きますと、脳出血で倒れて意識がない人が何人も救急車で運ばれてきました。その頃と比べてみますと、今はそういう病気の人は明らかに減少してきています。

高血圧の状態をそのまま治療しないでほっておくと、脳の血管が破れて命が危ないということが、いろんなメディアやマスコミをつうじてアナウンスされ、私たちの意識にだんだん浸透されてきて、高血圧を治療するようになってきました。

 

医院を開業して高血圧の患者さんを何人もみてきていますが、開業時間帯は周知のごとく午前は9時から12時、午後は4時30分から7時までの、いわゆる私たちが活動している日中の時間帯なのです。診察室で血圧を測る時はこの時間帯だけで、夜中、つまり睡眠中の血圧に関しての情報は全く無く、白紙の状態だったのです。

ここ最近10年前頃より、一日中血圧を測定できる器械が出てきて夜中の睡眠中の血圧を測れるようになりました。そうすると、昼間の血圧が全く正常でも夜中または早朝に血圧が上がる人がたくさんいることがわかってきました。さらに、衝撃的だったのは、夜中または早朝に血圧が高い人はそうでない人に比べ、脳卒中や心臓病を明らかに起こしやすいことがわかってきたのです。

こういう意味で夜中の血圧を測ることは大切ですが、いくらなんでもスヤスヤの睡眠中に血圧を測るなんてことは殺生です。そこで、その代わりに朝起きて30分以内の活動する前に血圧を測りましょうということです。こうすれば、ある程度夜中の血圧の代わりにもなるし、早朝の血圧の状態もわかります。

これからは暖かくなってくるので、身体を起こして座位で血圧を測ることは楽ですが、寒い冬の朝は座った状態ではおっくうで長続きしないので、ふとんにはいったままの臥位でもいいですから一度血圧を測ってみましょう。朝、血圧を測ることは、昼間の血圧とは違う結果が現れる可能性があり、新たな発見になるかもしれません。

朝の起床時の血圧はあなたしか測れません。夜間高血圧や早朝高血圧が潜んでないかどうか定期的に起床時の血圧を測っていただいて、脳卒中や心臓病を起こさないようにご自身のお体を守りましょう。

23年5月

「未病を治す」とは??

中国3000年の歴史のなかで、最古の書物といわれる「黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)」やもう少し後に書かれた「金匱要略(きんきようりゃく)」という書物に「未病を治す」という言葉が出てきます。そこには「道理に明るい人やすぐれた医者は、病気になってしまってから治療方法を講ずるのでなく、まだ病気にならないうちに予防する」という趣旨のことが書かれています。

「未病を治す」「治す」ということは、「病気を治す」という意味より、「黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)」には、季節を含めた外の環境と人間の生活を調和、調整させることだと説いていて、そうすれば災害、病気が起こりにくいと書かれています。

現代医学的な意味合いでは、病気を早期発見、早期診断し、早期治療をして病気の広がりや悪化を防ぐことであり、さらにもう少し広い意味では、病気の原因の予防から疾病の発生を防ぐ意味合いもあります。

最近、住民健診でメタボリック症候群が注目されていますが、その危険因子として肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病があります。これらの危険因子はそれ自体自覚症状はないので軽視しがちですが、放置すると病態は進行し、ガン、心臓病、脳卒中などの生活習慣病を引き起こします。このような病気になる前に、肥満、高血圧、脂質異常症などの危険因子を摘み取ることが予防医学であり「未病を治す」ことです。

 

そのためには古典に書かれているように、食生活、運動、ストレス生活、居住生活、睡眠などの生活習慣を正しくし、身体全体の調和を取り、病気にならない身体をつくることが大切になってきます。

一宮市では5月より市民健診が行われます。日頃忙しくて健診や血液検査を受けて見えない方はぜひこの機会を利用して、お体のチェックをしてください。詳しいことはスタッフにご相談ください。

23年4月

あなたの血管年齢は??

私たちの体には大小おびただしい数の血管が縦横無尽に走り、血液が脈々と流れ全身に栄養や酸素を供給しています。ひとたびその血液の流れが途絶えれば私たちは生命の危険にさらされます。

私たちの血管は年齢を重ねるにしたがい動脈硬化をきたしますが、その状態が進行すれば血液の流れが十分に行き渡らなくなり、ひいては脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などの生命にかかわる病態を引き起こします。これらの病気の怖いところは、風邪とか腹痛などとちがって病気になるまで自覚症状が出ない点です。自覚症状が出ないので知らず知らずに動脈硬化が進行していて、気づいてみたら脳梗塞、心筋梗塞を起こしていたという事態になる可能性があります。このようなことになるのは絶対避けなければいけません。

 

そのためには、漢方でいうところの「未病を治す」方針で、一歩先んじて病気にならないうちにその基を治療することです。それには血管の動脈硬化の状態を早く発見し、その進展を抑制して脳梗塞、心筋梗塞にならないようにすることが大切です。

その動脈硬化の程度や血管の弾力性を五分たらずで痛みもなく調べる方法があります。それはあおむけになってカフをつけ血圧を測るのと同じ要領で検査します。そうすると、心臓足首血管指数(CAVI)足関節上腕血圧比(ABI)といわれる検査数値結果が求められます。

心臓足首血管指数(CAVI)は動脈の硬さの程度を表しています。正常範囲は8.0以下で、9.0以上では動脈硬化の疑いありです。ちなみに私は8.5でしたので正常と動脈硬化の境界域でした。

足関節上腕血圧比(ABI)は足の動脈の詰まりの程度を表しています。正常範囲は0.9~1.3で、糖尿病などで足の血管が細くなったり詰まったりしている場合には0.9以下となります。

もしこの検査で異常があったらどうしたらいいかということですが、そう悲観することはありません。動脈硬化の程度や血管の弾力性は食事、治療によって良くなることがわかっています。

イヌイットはアザラシなどを主食とし血管の病気が少ないと言われていますが、その血中にはエイコサペンタエン酸(EPA)がたさんあることがわかっています。エイコサペンタエン酸(EPA)はイワシ、サンマ、サバなどに多く存在していて、血管の病気の予防に役立ったり動脈硬化を進めさせないと言われています。私たちもイヌイットのように血管の病気を起こさないよう、積極的にイワシ、サンマ、サバなどの魚油を食べましょう。

 

動脈硬化は知らず知らずに進みます。血管年齢をチェックして、動脈硬化を早期に発見し治療に努めましょう。

心臓足首血管指数(CAVI)足関節上腕血圧比(ABI)の検査は当院で行っています。保険適用です。お気軽にご相談下さい。

かぜに葛根湯??

私たちがかぜをひいてどんな薬をのんだらいいかなと思う時、昔から言われている「かぜに葛根湯」と言う言葉を思いだします。また、医者が薬を処方する際、葛根湯しか知らない医者に対して皮肉っぽく「葛根湯医者」と言います。このようにいろいろ種類がある漢方薬の中でも葛根湯は有名で、皆さんほとんどの方がご存じだと思います。

私たちがかぜをひいた時、寒気、熱、咽頭痛、頭痛や関節痛などの症状が出ますが、その症状の出方には、闘病反応といいますが、人によって少しずつ違いがあります。体に感じる寒さでは、ぶるぶる震える悪寒から、悪寒まで至らず風に当たって何となく寒く感じるいわゆる悪風の程度でおさまる人、熱に関しては体温が39゜~40゜Cにまで出る人がいる一方、37゜C位までしか出ない人などさまざまです。

 

私たち人間の体には、生きていくためのエネルギーを作り出す発電所が備わっています。口から取り入れた食べ物をエネルギーに変えて、全身にくまなく行き渡らせるようにある臓器が発電所として働いています。それはどこでしょうか?? 私たちの体の中心部にある胃です。胃が強い人は、全身に行き渡らせるエネルギー(「胃の気」といってもいいと思います)の産生が多いのです。この「胃の気」が多ければ、全身にたくさんの「気」を分け与えることができます。

この「胃の気」の多い人と少ない人とでは病気の症状、前に書きました闘病反応、に違いがあります。病気の症状に違いがあれば、当然その人その人に合致する薬は違ってきます。

私たちが風邪をひいた時にどんな漢方薬が一番その人に合っているかどうかということは、その人の症状の出方によって違ってきます。それを決める重要な要因は、その人の「胃の気」の多い、少ないかです。「胃の気」の多いつまり闘病反応が強い人には、葛根、麻黄といったやや強めの生薬が入っている「葛根湯」を、「胃の気」の少ない闘病反応が弱い人には、あまり聞き慣れないでしょうが、麻黄が入っていない「桂枝湯」をそれぞれ服用すると、症状に応じた適切な治療選択になると思います。

一律的に「かぜに葛根湯」でなく、人それぞれの症状の出方によって一番合う薬を処方することが大切だと思います。いわゆるオーダーメイド治療は漢方の得意とする分野だと思います。

心臓の働き具合が血液検査でわかる??

心臓がうまく働いているかそうでないかを調べるには、、昔からある検査として胸のレントゲン、心電図や心エコー(心臓超音波)などがあります。最近では心臓に造影剤を入れて心臓の動きや大きさなどを調べる造影検査や、さらには高性能のCTを使用して心臓の中の状態や冠状動脈(心臓の表面を走っている動脈)を調べる検査があります。しかし、これらの検査にはいろいろな器械が必要となります。

今回紹介します検査は器械を必要としないで、血液検査だけで心臓の働きがわかる検査です。それはNT-proBNPと言われる物質を測る検査です。少々ややこしい英語ですが、一口に言って心臓から出るホルモンのことです。ホルモンが心臓から出ているのかと当初発見されたときは驚かれましたが、確かに心臓からホルモンが出ているという事実には誰でもびっくりすることと思います。

このNT-proBNPというホルモンは、心臓の細胞に負担がかかったときに出てきます。負担がない元気な心臓では小さな数値ですが、心臓が疲れて負担になった状態では数値が上昇します。心臓の弁がうまく働かない心臓弁膜症、心不全の方では、5000を超えることもあります。(正常の数値は125以下です)

このように、このNT-proBNPというホルモンは簡単に血液から測定できて、かつ心臓の疲れ具合の有無を的確に判定できます。また、時間の経過を追ってこのホルモンの数値を観察すれば、心臓の状態の変化や治療がうまくいっているかどうかの判断材料となりなす。

いつでも当院で測定できますので、心臓がなんとなくえらい、歩くと息切れするなどの症状があったり、心臓の働き具合を調べたいなどの要望がありましたら遠慮なく申しつけ下さい。